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第4話 

 私は頭を抱え、激しい頭痛に襲われながら、涙が次から次へと溢れた。

 やめて、もうやめて。

 彼の話をするたびに、私たちのあの忌まわしい過去が自動的に頭に浮かんできてしまう。

心臓もズキズキと痛みを感じる。

 山田瑞臣の言う通り、渡辺直熙のような人間に、罪悪感なんてものは存在しない。

 当時の渡辺直熙は、スヌーカーのプロ選手で、まるで彗星のごとく現れた「天才スヌーカー選手」として一躍注目の的になっていた。

 一方私は、スヌーカーの審判員で、簡単に言えば、選手が球を打った後に母球を元に戻すような仕事をしていた。

 7年前の試合で、私は低く身をかがめてボールをセットしていたところ、後ろにいた外国人選手が、私のお尻に対して下品な動きをしたのだ。

 公衆の面前での職場におけるセクハラだった。

 会場中がざわめいた。

 その時、私は恥ずかしさと怒りに包まれていたが、気が弱く、ただの審判でしかない私は何も言えなかった。

 すると、渡辺直熙がその外国人選手の顔に拳を叩き込み、「中国の女性を侮辱するな」と彼を怒鳴りつけたのだ。

 まるで救世主が現れたかのように感じた。

 私の心臓は激しく鼓動し始めた。

 いや、実際のところ、私はもっと前から渡辺直熙に心を奪われていたのかもしれない。

 父はスヌーカーの元選手であり、幼い頃からこのスポーツと深く関わっていたため、メディアで盛んに取り上げられる渡辺直熙に目を向けないわけがなかった。

 むしろ、メディアよりも早く、彼に注目していた。彼が頭角を現した頃から、私はずっと密かに彼を見守っていた。

 彼が試合で優勝した際の写真をプリントして、大事に取っておいたほどだ。

 言い換えれば、私は彼に密かに恋をしていたのだ。

 しかし、私たちの立場には天と地ほどの差があった。彼は世界的に有名なスヌーカーのトップ選手であり、さらに国内の大手企業・渡辺グループの後継者でもあった。

 富と権力を兼ね備えた男だった。

 一方の私は、ただの審判員にすぎず、美人スヌーカー審判としてメディアに少し取り上げられたことがあるくらいで、特に目立つところは何もなかった。

 だからこそ、彼がその選手を殴ったその夜、女子トイレの外で私を狭い壁の角に追い詰めたとき、私は嬉しさと困惑が入り混じっていた。

 彼は私の顎を掴み、無理やり顔を
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